今回は書籍の紹介です。
『歯はいのち』(笠茂享久著 2007年文藝春秋)
我々脊椎動物の祖先をたどると、原索生物のホヤの祖先ムカシホヤになります。
海底に張り付いて、波の動きにゆらゆらとたなびきながら、海水中の栄養分を吸収しています。ホヤの身体は養分吸収の腸管と呼吸のための鰓腸からなり、口から食物と酸素を含んだ海水を取り込み、鰓孔と肛門から排出する、袋のような作りになっている生き物です。
エラからあご、歯が生えて
ホヤのような生物から、ナメクジウオ、円口類、ネコザメから爬虫類へと進化していきます。
(これはかなり省いて書いています)そこから哺乳類へとつながっていきます。
生物が生きていくには、栄養と酸素が必要です。その取り入れ口が『口腔』なのです。口腔がしっかり発達していないと、栄養も酸素も取り込めないので個体が存続することができません。私たち人間も、口から食べることができなかったら、生きていかれませんね。どんなに立派な腕や脚があったとしても呼吸ができなかったら、数分で死んでしまいます。
また、私たちに歯がなかったらどうでしょう。せっかく食べ物があっても、咀嚼できなかったら飲み込むことしかできません。するとかなり胃腸に負担がかかります。蛇のように食べ物を飲み込んだら、しばらく動くことができないかもしれません。我々人間は、鋭い爪も牙もないですし、裸ですので傷つくとすぐに弱って死んでしまいます。それでは都合が悪いのです。
噛み合わせの大切さ
ですから、歯が大切になってくるのです。そしてかみ合わせです。食べ物をしっかりと噛み、消化するには歯のかみ合わせが重要なのです。歯のかみ合わせが悪いと、頭の骨がゆがんだりするのです。頭には大事な脳が入っています。顔や頭がゆがむことで、脳に圧力がかかったり、血行が悪くなったりすると機能に障害が現れます。すると頭痛やめまい、不眠、視野狭窄、生理不順、肩こり首の凝りなど様々な症状を引き起こすのです。
咀嚼は足でする
咀嚼力は、正しい噛み合わせと、土台である足が大切です。
食べるときに、足をぶらぶらさせたり足を組んだりしていると咀嚼力が変わります。しっかり足を付けた場合と、つけない場合とでは20%も噛む力が変わるという実験結果があります。
ですから、しっかりと咀嚼運動をするためには、足の踏ん張りが必要なのです。
とくに小さなお子様ですと、足をぶらぶらしながら食事をしていることが多いと思います。しっかりと咀嚼力を着けさせるには、座卓で足を床につけて食事をさせるなどの工夫が必要です。
頬の筋肉が咀嚼に
頬の筋肉は口の中を袋状にぐるりと覆っているために、三次元的ねじれを引き起こしやすく、咀嚼筋以上に下あごの位置をずらし、かみ合わせを悪くします。ですから、頬筋のこりをとってあげることがとても重要です。
そこで舌回しを行います。
舌を頬と歯の間に押し込み、外側にしっかりと圧しつつ舌をぐるぐると回してください。左右それぞれ、頬がほぐれるまで行います。後ろ側から前に動かす気持ちでやるとよいでしょう。同時に歯茎と唇の間にも舌を入れ、上下それぞれしっかりほぐします。
私は、舌が異常に短いので実はできません。ですから、自分の指で行っています。爪を切り口腔粘膜を傷つけないように気を付けます。指を口に入れ歯茎と頬の間をじっくりストレッチするように伸ばしていきます。痛い所は丁寧に時間をかけてのばしていきましょう。一通り行うと、口周りが軽くなります。人によっては首の凝りも楽になるのではないでしょうか。
しっかり噛んで食事をする
口腔を調えたら、あとは食べるだけですね(笑)。その時はしっかり咀嚼しましょう。目安は30回。
消化は口に入った瞬間からはじまります。胃からではありませんよ!念のために言っておきます。
よく噛み唾液をしっかりと分泌させ、でんぷん質をアミラーゼで分解させます。そうすることで胃腸の負担が少なくなり、結果腸内環境も良くなります。免疫機能も高まりますので、いいことずくめです。
この書籍の内容はもっとたくさんあるのですが、すべてを紹介することはできないので、私が重要だと思った一文を紹介します。
以下引用
心と内臓と容器としての身体、この三つは、どれがゆがんでもバランスを崩していきます。容器のねじれをとればよく噛め、よく噛めれば内臓は活性化し、心は安定する。その調整の鍵を握るのが、咬合なのです。ですから、歯のケアは、いのちの根幹にダイレクトに働きかける最良の健康法なのです。
以上引用終わり
口腔のゆがみが全身に影響を及ぼします。私は「口」を調えることこそ、人が健康に人生を送ることができるのだ、とこの本を読んでつくづく思いました。
食べるだけではありませんよ。口から出すもの『言葉』も調えましょう。笑顔ももちろん大切です。